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丸山 龍治; 山崎 大; 海老澤 徹*; 日野 正裕*; 曽山 和彦
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1256 - 1258, 2006/11
被引用回数:25 パーセンタイル:70.4(Physics, Condensed Matter)中性子スーパーミラーは、中性子ビームの輸送,収束に用いられる重要な中性子光学素子となっている。われわれはそのミラーを、密度が高く、結晶粒が小さい良質な膜が得られるイオンビームスパッタ装置を用いて開発してきた。また、多層膜の界面粗さを抑えるために、イオンポリッシュ法の研究も行ってきた。われわれは、実効臨界角の大きなスーパーミラーガイド及びベンダーの実現に向けて、新しく直径500mmの有効積層面積を持つイオンビームスパッタ装置を導入した。本発表では、その装置を用いて積層したスーパーミラーの性能及びスーパーミラーを用いた将来の中性子光学素子開発について議論する。
大原 高志; 栗原 和男; 玉田 太郎; 田中 伊知朗*; 新村 信雄*; 黒木 良太
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1049 - 1051, 2006/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Condensed Matter)JRR-3炉室に設置された単結晶中性子回折計BIX-3及びBIX-4は、生体高分子用に設計されたものではあるが、入射中性子の波長を2.9Aから1.5Aに変更することで分子量の小さな有機化合物結晶の測定も可能となる。これらの回折計は検出器として大面積の中性子イメージングプレートを備えているため、比較的格子定数の大きな有機結晶の単結晶回折や繊維回折の測定を効率的に行うことができる。本発表では、BIX-3及びBIX-4の、低分子結晶用の回折計としての性能を紹介する。
桑原 慶太郎*; 岩佐 和晃*; 神木 正史*; 金子 耕士; 目時 直人; Raymond, S.*; Masson, M.-A.*; Flouquet, J.*; 菅原 仁*; 青木 勇二*; et al.
Physica B; Condensed Matter, 385-386(Part 1), p.82 - 84, 2006/11
被引用回数:3 パーセンタイル:17.99(Physics, Condensed Matter)重い電子系超伝導体PrOsSbにおける低エネルギー磁気励起を調べる目的で、中性子非弾性散乱実験を行った。観測された磁気励起は、磁場誘起反強四極子秩序の秩序波数であるQ=(1,0,0)で明瞭なソフト化を示し、かつその強度はゾーンセンターと比べて弱いことを明らかにした。この結果は、これらの励起スペクトルの振舞いが、非磁性の四極子相互作用に起因していることを示している。さらに、励起スペクトルの線幅が超伝導転移以下で狭くなることから、励起子と超伝導の間に強い相関があると考えられる。
深澤 裕; 星川 晃範; 山内 宏樹; 山口 泰男*; 井川 直樹; 石井 慶信
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.113 - 115, 2006/11
被引用回数:3 パーセンタイル:17.99(Physics, Condensed Matter)通常の氷であるIce Ihの水素原子は無秩序に配置しているが、低い温度で無限の時間を経過させると、水素原子の配置が秩序化した構造(Ice XI)へ変化すると予測されている。このIce XIの形成過程を調べるために、KOD等の水酸化物を含有させて変化に要する時間を短縮させた氷結晶の中性子回折を測定した。相転移点(76K)以下の特定の温度域(62-70K)において、氷の中性子回折が時間の経過に伴って変化する過程を観測した。また、回折プロファイルのリートベルド解析を行い、Ice XIへの相転移に伴う構造パラメーターの変化を温度と時間の関数として分析した。この分析結果に基づいて、さまざまな条件下(温度や不純物濃度等)におけるIce XIの発生と成長の過程の特徴について発表する。そして、無限の時間経過において、完全に水素原子が秩序化した構造の氷が自然界に存在しうるのかについての洞察を述べる。
梶本 亮一; 中村 充孝; 長壁 豊隆; 佐藤 卓*; 中島 健次; 新井 正敏
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1236 - 1239, 2006/11
被引用回数:9 パーセンタイル:41.55(Physics, Condensed Matter)J-PARCに建設が予定されている冷中性子ダブルチョッパー分光器(CNDCS)のための中性子ガイド管の性能の検討を行った。この分光器は80meVのエネルギー範囲での中性子非弾性散乱法による物性研究に用いられる。弱い非弾性散乱シグナルを検出するためには試料位置での中性子強度をできるだけ上げ、かつ検出器位置でのバックグラウンドを抑える必要がある。その点、中性子ガイド管は多くの中性子を試料まで輸送することができる一方、曲管にすることで不要な中性子が検出器に到達するのを抑えることもできる重要なデバイスである。ガイド管の性能は、その形状,配置に依存するが、ガイド管形状が直線状,曲線状,テーパー状,放物線状,楕円状などのときの中性子強度のエネルギー依存性や空間分布,角度分布をモンテカルロシミュレーションによって求め、CNDCS分光器にとって最適な形状について比較検討した。
奥 隆之; 山田 悟; 笹尾 一*; 鈴木 淳市; 篠原 武尚*; 広田 克也*; 池田 一昭*; 津崎 剛*; 鬼柳 善明*; 古坂 道弘*; et al.
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1225 - 1228, 2006/11
被引用回数:10 パーセンタイル:44.47(Physics, Condensed Matter)六極磁場は、中性子に対して理想的なレンズとしての機能を有する。われわれは、これまで、この六極磁場に基づく中性子磁気レンズの開発研究を進めてきた。今回、われわれは、中性子散乱研究における中性子磁気レンズの実用化を目的として、比較的安価で、小型,メンテナンスフリーという特徴を有する永久磁石型中性子磁気レンズを開発した。われわれは、発展型ハルバッハ六極磁気回路を採用することにより、永久磁石でありながら、30mmの大口径と、実用レベルの中性子集光能力を兼ね備えた磁気レンズの開発に成功した。会議では、偏極中性子を用いた磁気レンズの評価実験の結果をもとに、磁気レンズの性能について詳細に報告するとともに、中性子磁気レンズの応用方法についても議論する予定である。
元川 竜平; 小泉 智; 橋本 竹治; 中平 隆幸*; 安中 雅彦*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.780 - 782, 2006/11
被引用回数:1 パーセンタイル:6.64(Physics, Condensed Matter)ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)とポリエチレングリコール(PEG)から構成されるPNIPA-PEGジブロック共重合体(NE)は、ソープフリー乳化重合により合成可能である。本重合過程では、合成されるNEが水溶媒中で相分離を起こすため、PNIPAをコア、PEGをコロナとするミセル構造を自発的に形成することを、われわれは既に報告している。今回の発表では、このミセル構造の特性とラジカル重合反応の持続性との関係を明らかにするために、原研JRR-3の中性子小角散乱装置(SANS-J, PNO)を用いて、ナノメートルからマイクロメートルに渡る広い空間スケールを観察し、ミセル重合場のサイズ,空間分布等を詳細に決定した。その結果、このジブロック共重合体(NE)の下限臨界溶液温度(34度)以上の重合条件下で形成されるミセル重合場のコアは、脱水和により強い疎水性を有し、かつ固体的であることが明らかになった。この固体的なコアに閉じ込められた生長末端ラジカルの2分子停止反応は著しく抑制され、その結果、ラジカル重合が長時間に渡り持続することが明らかとなった。また、34度以下の重合温度における重合過程についてもSANSを用いてその場観察を行ったので、この結果についても報告する。
山口 大輔; 小泉 智; 元川 竜平; 熊田 高之; 相澤 一也; 橋本 竹治
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1190 - 1193, 2006/11
被引用回数:15 パーセンタイル:56.29(Physics, Condensed Matter)新規なタンデム検出システムを日本原子力研究開発機構付属の二結晶型中性子超小角散乱(USANS)装置に導入した。通常のUSANSのセットアップでは、ステップスキャンという、一時に1つのqでのみ散乱波を検出する測定方式を採用しているため、全q範囲(210nmq710nm、ただしqは散乱ベクトルの大きさ)の散乱強度プロファイルの測定には膨大な時間を要していた。この問題点を克服するために、2つのアナライザー結晶を直列に配置し、それぞれの結晶に異なるqの散乱波を検出させるようにした。その結果、2つの異なるqを同時に測定することが可能となり、測定時間を半分に短縮することに成功した。
宮元 展義; 山内 一浩*; 長谷川 博一*; 橋本 竹治; 小泉 智
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.752 - 755, 2006/11
被引用回数:5 パーセンタイル:27.22(Physics, Condensed Matter)イソプレン及びスチレンのリビングアニオン重合過程を時間分解中性子小角散乱(SANS)及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、イオン性のリビング末端が形成する会合体について以下のことを明らかにした。反応の溶媒には重水素化ベンゼン、開始剤にはsec-BuLiを用いた。イソプレンの系(最終分子量5300g/mol)では時間とともに散乱強度が増加する様子が観察された。GPCにより測定した分子量の時間変化に関するデータを用いることで、時間分解SANSにより得られる散乱曲線を定量的に解析し、会合数の時間変化を明らかにした。一方、リビング重合を停止させるとSANSプロファイルは大きく変化し、散乱強度は大きく減少した。この結果は、重合停止に伴う末端会合の解消を示唆している。
加倉井 和久; 長壁 豊隆; 後藤 健治*; 大沢 明*; 藤澤 真士*; 田中 秀数*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(Part 1), p.450 - 452, 2006/11
被引用回数:1 パーセンタイル:6.64(Physics, Condensed Matter)KCuCl及びTlCuClはそれぞれ31K及び7.7Kのギャップエネルギーを持つスピンシングレット基底状態系である。このスピンギャップの要因はCuClが形成する反強磁性ダイマーである。磁化の測定からそれぞれ8.8kbar及び0.42kbarの臨界磁場でこれらの系が圧力誘起磁気秩序を示すことが明らかにされた。今回、圧力下の中性子散乱実験によりこの圧力誘起磁気秩序構造を解明し、スピン-格子相関に起因すると思われる新規なスピン方向変移(spin reorientation)が観測されたので報告する。
Harjo, S.; 神山 崇*; 鳥居 周輝; 石垣 徹; 米村 雅雄*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(Part 2), p.1025 - 1028, 2006/11
被引用回数:4 パーセンタイル:22.76(Physics, Condensed Matter)J-PARCの茨城県材料構造解析装置は、 (L1=26.5m)において高分解能/=0.16%(ほぼ一定)を実現するとともに、広い2範囲をカバーするため広い範囲()の測定、すなわちPDF解析及び小角中性子散乱も可能にする。したがって、ビーム強度を犠牲にせず上記の特徴を高めるために中性子ガイド管の選択・設計は非常に重要である。本研究では、McStasシミュレーションを用いて、中性子を2次元的集光できる放物線的な形状を持つガイド管、すなわち楕円形ガイド管のようなバリスティックガイド管と、直ガイド管との特性を比較した。出口の焦点が試料位置よりも長くした楕円形ガイド管は、試料位置でのフラックスを若干上げることはできるが、装置の分解能を悪くした。また、この楕円形ガイド管は比較的短い波長においてガーランドピークを作り、粉末回折測定において大きな誤差を与えてしまう。一方、直ガイド管は、試料位置では全波長において一様な空間分布及び小さい発散角を持つ入射ビームを実現することができる。これらのことを考えると、直ガイド管は良い分解能及び比較的高いフラックスを保つためには最良な選択である。
高橋 伸明; 金谷 利治*; 西田 幸次*; 高橋 良彰*; 新井 正敏
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.810 - 813, 2006/11
被引用回数:6 パーセンタイル:31.23(Physics, Condensed Matter)われわれはポリビニルアルコールの重水素化ジメチルスルホキシド/重水混合溶液の物理ゲル化過程におけるせん断流動印加効果を時間分割二次元小角中性子散乱測定により研究した。サンプル溶液を100Cから25Cへクエンチした直後から定常せん断を印加し、時間分割測定を行った。観測した二次元散乱パターンは等方的であったが、散乱強度はゲル化に伴い増加した。また散乱強度の増加の度合いは、印加したせん断速度に依存することが明らかとなった。これまでの研究から本系のゲル化プロセスは、高分子鎖の結晶化により形成した微結晶が網目の架橋点として働くことが明らかとなっており、測定Q範囲は架橋点、及び網目構造を反映したものであることから、当該Q範囲の散乱強度から結晶化速度を評価し、定常せん断速度に対してプロットした。その結果、結晶化速度は、せん断速度5sec以下ではせん断速度の増加に伴いエンハンスされること,それ以上の高速せん断下においては結晶化速度が静置場よりも下がることが明らかとなった。この結果は、フレキシブルな高分子鎖の部分的な配向が、微弱な定常せん断を印加することにより誘起されていることを示唆しており、同時に、高速せん断下においては高分子鎖がより強く配向されているはずであるが、一旦形成した結晶核が破壊されることによるものと推測される。
中村 充孝; 岩瀬 裕希; 新井 正敏; Kartini, E.*; Russina, M.*; 横尾 哲也*; Taylor, J. W.*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.552 - 554, 2006/11
被引用回数:3 パーセンタイル:17.99(Physics, Condensed Matter)超イオン伝導体ガラスにおける高いイオン伝導機構はサイエンスの未解決の問題の一つである。われわれは、ISISに設置されているMARI分光器を用いて(AgI)(AgS)(AgPO)系超イオン伝導体ガラスの非弾性中性子散乱測定を行った。その結果、超イオン伝導体ガラスにおいて1meVから3meVに渡るエネルギー領域での依存性が、=1.8 を超えたところで絶縁体ガラスよりも過剰な強度を持つことを見いだした。同じような現象は、HMIに設置されているNEAT分光器を用いた高分解能測定によって、別の超イオン伝導体ガラス(AgI)(AgPO)においても観測された。これらの結果は明らかに、特異な低エネルギー振動励起が超イオン伝導体ガラスに普遍的な特徴であることを示唆するものである。
田中 宏和; 山内 一浩*; 長谷川 博一*; 宮元 展義; 小泉 智; 橋本 竹治
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.742 - 744, 2006/11
被引用回数:22 パーセンタイル:65.77(Physics, Condensed Matter)重水素化ベンゼン中でスチレンモノマーとイソプレンモノマーを共存させ、sec-ブチルリチウムを開始剤としてリビングアニオン重合を行った。これによりポリスチレンとポリイソプレンからなるブロック共重合体を合成した。この合成過程を中性子小角散乱(SANS),ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC),紫外可視光吸収スペクトル(UV-vs)により時間分割的に測定し、重合に伴う構造形成の様子をその場・実時間観察した。その結果、重合初期にはまずイソプレンモノマーが優先的に重合されてポリイソプレンが生成し、系内のイソプレンモノマーが消費されたのちスチレンモノマーの重合が始まり、ポリイソプレン-ポリスチレンブロック共重合体が生成することがGPC, UV-vsの結果から明らかとなった。また、この重合過程において、溶液内で高分子鎖は単独では存在せず、数本が集まって会合体を形成していることがSANSから明らかとなった。さらには、重合初期のポリイソプレンが生成している時間領域では、その会合数が4であるが、重合後期にスチレンモノマーの重合が始まると、会合数が2に急激に減少することが明らかとなった。
社本 真一; 山田 昇*; 松永 利之*; Proffen, T.*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.574 - 577, 2006/11
被引用回数:5 パーセンタイル:27.22(Physics, Condensed Matter)光記録材料GeSbTeとGeBiTeの結晶構造を、高速相変化機構との関連から、粉末パルス中性子回折データをもとに、実空間及び逆格子空間のリートベルト解析により研究を行った。これらの結晶相は、大きな局所構造歪みを持っており、加えて、GeBiTeの結晶子サイズが約150と非常に小さいことがわかった。これらの結果は、結晶子とアモルファス相とのエントロピーの類似性が、高速相転移機構に重要な役割をしていることを示している。
酒井 健二; 木下 秀孝; 甲斐 哲也; 大井 元貴; 神永 雅紀; 加藤 崇; 古坂 道弘*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1324 - 1326, 2006/11
被引用回数:3 パーセンタイル:17.99(Physics, Condensed Matter)物質生命科学実験施設(MLF)は、ミュオン・中性子ターゲット,ターゲットステーション,実験ホールなどを含むMLFの各設備のシステム全体を統括的に制御することが要求される。したがってMLFは独自の全体制御システム(MLF-GCS)を持つ必要があるが、一方で、MLF-GCSはJ-PARCの加速器や他のユーザー施設の制御システムと協調しながら稼動することが要求される。MLF-GCS構築の現状は、全体設計は既に済んで、各部の詳細設計と調整を進めている段階である。本論文では、MLF-GCSの概要と開発状況について報告する。
小泉 智; 岩瀬 裕希; 鈴木 淳市; 奥 隆之; 元川 竜平; 笹尾 一*; 田中 宏和; 山口 大輔; 清水 裕彦; 橋本 竹治
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.1000 - 1006, 2006/11
被引用回数:39 パーセンタイル:80.68(Physics, Condensed Matter)既存のピンホール型中性子小角散乱装置(SANS-J)に集光レンズと偏極素子を導入することで集光型偏極中性子小角散乱装置(SANS-J-II)へと高度化することに成功した。その結果、これまで観測が不可能であった数マイクロメートル(波数で0.0001 reciprocal angstromに相当)まで観測領域を拡大することに成功したのでこの成果を発表する。
金谷 利治*; 高橋 伸明; 西田 幸次*; 瀬戸 秀樹*; 長尾 道弘*; 武田 隆義*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.676 - 681, 2006/11
被引用回数:13 パーセンタイル:52.05(Physics, Condensed Matter)中性子スピンエコー法により三種類のポリビニルアルコール(PVA)ゲルについて研究した。第一にジメチルスルホキシド(DMSO)と水を体積混合比60対40で混合したものを溶媒とするもの、第二にPVAのホウ酸水溶液、そして第三に化学架橋のPVAゲルである。中間散乱関数I(q,t)/I(q,0)はそれぞれ大きく異なった。最初のゲルと第三のゲルは、非減衰項を含むが、第二のゲルは含まなかった。これは非減衰項が静的濃度揺らぎに起因して起こることを示唆している。静的濃度揺らぎと動的濃度揺らぎはそれぞれ、ゲル網目による運動の制限とZimmモードに起因する高分子鎖セグメントの運動を示していることが明らかとなった。
中川 洋; 片岡 幹雄*; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 徳久 淳師*; 筑紫 格*; 郷 信広
Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.871 - 873, 2006/11
被引用回数:13 パーセンタイル:52.05(Physics, Condensed Matter)スタフィロコッカルヌクレアーゼを用いてタンパク質のボソンピークの水和との関連を調べた。ボソンピークは合成高分子,ガラス性物質,アモルファス物質に共通に見られるものであるが、その起源は十分には理解されていない。ボソンピークに寄与する運動は調和振動である。水和によりピークの位置は高周波数側にシフトし、振動の力学定数は増加した。このことはタンパクのエネルギー地形が変化したことを示す。タンパク質が水和することでエネルギー地形がより凸凹になり、極低温ではエネルギー極小に振動がトラップされる。タンパク質のボソンピークの起源はこのエネルギー地形の凹凸と関係しているかもしれない。
加美山 隆*; 関 直樹*; 岩佐 浩克*; 内田 努*; 海老沼 孝郎*; 成田 英夫*; 井川 直樹; 石井 慶信; Bennington, S. M.*; 鬼柳 善明*
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.202 - 204, 2006/11
被引用回数:7 パーセンタイル:35.12(Physics, Condensed Matter)メタンハイドレートの中性子非弾性散乱実験を行い、メタンハイドレートホストネットワーク中に内包されるメタン分子の挙動を解析した。その結果、メタンハイドレートに内包されているメタンは自由回転運動をしてるが、そのほかに10meV以下のエネルギー範囲に自由回転運動以外に起因する散乱ピークが観察された。これらのピークはメタンハイドレートの2種類のカゴ中でのメタンの局所的並進運動によるものであることを明らかにした。